薬やまと堂

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うめ爺とうめ子の楽しく優しい日々

相談余話

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相談余話

無事

寒い冬を迎え、今年も終わりが近づく中、忘れることのできない本があります。髙田郁著「出世花」と「蓮華の契り」です。どのような境遇でも自分の一生をかけられる仕事に誇りを持ってやり遂げていく。そこに人間としての素晴らしさがあるようです。「出世花」の「正縁さんと正念さん」や「蓮の愛」に見られる「貞心尼さんと良寛さん」のように師と弟子としてともに温かく見守る情愛がなんともいえません。そういう環境があれば、人間は必ず独り立ちしていくのではないでしょうか。一人の立派な人間が作られると思います。病を抱えている方にどれほど寄り添え、手を差し伸べられたか反省するばかりですが、今年の締め括りとして、「無事」という言葉を皆様に受け取ってもらえれば何よりです。「無事」新年を迎えることをお祈りしております。一年間ありがとうございました。

店主

今日も修行です。
秋の深まりとともに、教えを受けた先生が偲ばれます。「自分を知るとは、生かされているばかりの自分を知れということで、誰がどれだけ自分を生かしてくれる力を与えてくださっているかを知ることだそうです。」そしてその量が多ければ多いほど、自分が深まっていること、つまりどれだけ進歩したかの目安になるとおっしゃっていました。それがまた、終生の修行とも言っております。『健』は丈夫な身体のために、『康』は穏やかな心を保つために、どれだけそれらに心砕いて努めたかによって、人間として成長するのではないでしょうか。それは「何もできない自分を生かすために、全ての働きが自分を支えてくださる。」と言うことでもあります。修行に終わりはないと思います。今年も残り少なくなってきましたが、多くの方に支えられながら、今日も修行に励みたいと思います。
希望と安心
お彼岸も過ぎる頃になると、夏の残暑からも解放され、過ごしやすくなってきました。昨日実家からの帰り道でしょうか、Cさんが店前を自転車で元気に会釈をしながら通り過ぎていきました。うれしそうなお顔に安心しました。もう20年のおつきあいになるでしょうか。そのCさんは甲状腺機能に異常があって、若いときからお薬を服用しております。お薬の服用で一応、検査結果は安定しており、経過観察になっていたようです。当店に見えたときの訴えは、「汗や動悸が気になる」「疲れやすい」などでした。甲状腺の機能状態は問題がなくても不快な症状は続いていたのです。生活の質(QOL)を少しでもあげて、快適な生活を求めて来店されました。甲状腺ホルモンが多い場合もあれば、少ない場合も不快な症状として「寒がり」「無気力」「むくみ」など自覚症状として表れます。Cさんは、漢方薬と免疫機能調整作用のある物質も一緒に服用しているため、自覚症状もなくたいへん元気なようです。自己抗体を抑制することは、抗リン脂質抗体症候群(不育症の原因の一つ)にもたいへん喜ばれております。昨日より今日、そして明日へと「希望のある」「安心できる」日が来ることを目標に精進、精進です。
規則を超えたところにある本当の規則
8月15日から4日間夏休みをいただき、米沢八湯の一つである大平温泉・滝見屋さんへ行ってきました。吾妻山嶺の市道の山林を車で登りきり、頂上に車を止め、そこから最上川源流に向かってトレッキングです。このような場所に宿があるのか心配でしたが、ひっそりと山陰に秘境の一軒宿がありました。何よりも宿の方の笑顔に救われました。今まで訪れた宿の中では、やはり秘湯中の秘湯ではないでしょうか。何もない中にあるのは、自然の美しい変化と、豊富な温泉です。地獄にも仏とはこのような場所に来て体験できるのですね。二日間の滞在が夢のようでした。そしてこのような秘湯の宿を守っている女将さんをはじめ、スタッフの方々には感謝、感謝しかないようです。秘湯の宿めぐりで、はじめて秘湯とは何かをつかめたようです。名勝、火焔の滝は望めませんでしたが、おそらく忘れることのできない貴重な体験になったことは間違いないと思います。そして何かとは、「規則を超えたところに本当の規則がある」ということではないでしょうか。ありがとうございました。
沈黙こそ真実の言葉
病と向き合うお客様に季節は関係ないようです。この暑さの中に多くの方が当店に見えてご相談されます。この季節は、電話で今日の状態をお聞きして、「いつもと違う」という方には2、3日様子を見てからご来店してもらうようにしております。くれぐれも無理をせず熱中症には気をつけていただきたいものです。相談に見えて理路整然とお話をされる方もいれば、とつとつと一言一言を選んでお話しされる方、表現の仕方はそれぞれに違います。どの方にも共通する大事なことは、お話を終えた後の沈黙です。言葉にならない「余白」にこそ、その人の真実があるように思います。悩みの深さ、病の深さを感じることができます。相談に見えて言葉は少なくとも十分に伝わるものがあります。心を込めて話した短い言葉にも、相手の心にしっかり届いておりますので安心してください。どうぞ、沈黙もよいものですよ。
青梅の誉れ
梅雨入りを目前にして、鈴木牧之の代表作「北越雪譜」で知られている最後の秘境秋山郷に日本秘湯を守る会の湯宿「川津屋」さんを訪ねました。新潟寄りの郷の入口とはいえ、川津渓谷沿いの秘湯そのままの環境です。ここに来る目的の一つに、我が郷土の誉れ、小説家の吉川英治さんが長滞在していたそうです。そのお話をしていたので、宿の女将さんの計らいで吉川英治さん滞在の部屋を用意してくださいました。また食事の時にはそのとき使用していた机も見せていただきました。そしていつも私が戒めとしている言葉に「我以外皆我師」と書かれた書があることに感動しました。ふるさとに帰ってきたおもてなしといい、この宿の温かさに吉川英治さんも同じ思いだったかもしれません。本当に自然の美しさと情が身にしみる宿でした。
今日も真剣勝負です。

新緑の美しい季節になりました。今日も病という重い荷を背負って当店に来店してくださいます。駅よりまっすぐな一本道ですが、350mあります。その歩みはゆっくりですが、私も店の外に出て、その歩みを見守ります。毎日のことですが、相談のヒントになることがあります。年齢を重ねることも病いと言うことであれば、そこに病名をいただく病いが重なればやりきれないのが本当ではないでしょうか。それでも精一杯の笑顔で来店してくださいます。何も語らなくても、その笑顔がすべてを教えてくれているようです。

「君看ずや双眼の色 語らざれば憂いなきに似たり」 良寛

多くの病いを乗り越えてきた人の顔は、何も語らなくても誰よりもすてきですね。 と言っているようです。お顔には「体の全神経」が表現されているそうです。まだまだ理解し得ないところがあります。宮本武蔵にはなれませんが、千の稽古、万の稽古を重ねる鍛練をしていくしかないと思います。不眠からストレス、そして風邪、風邪は万病の元です。夏の風邪は冬の風邪のように症状がはっきりしませんので注意が必要です。またこの風邪によって熱中症は重症化するものと思います。さらに注意が必要かと思います。さあ~、今日も真剣勝負です。

山吹への思い

里山の山肌の影にひっそりと黄色の花びらが、幾重も見られるようになりました。今年も山吹の季節が来たようです。粗末な環境の中にも凜とした気品と優しさ、そしてひっそりとした佇まいに花の精を感じるようです。あの方は今どうしておられるか、元気な日々を過ごしていることを願いながら…、そして今もってSOSを発信して病に苦しんでいらっしゃる方々を思わざるを得ません。

七重八重花は咲けども山吹の
実のひとつだになきぞ悲しき

誰の歌なのかは知りませんが、きっとその人は生きる喜びを知らせに来た花の精のように思います。さあ今日も相談を通して「安心」というお土産を持って帰っていただければ幸いです。

老いも病気と思えば…

人生も年を重ねることで、やはり若いときのようにはいかないものですね。物忘れは毎日のことであり、体調も日々違うことがわかるようです。このようにして老化というものが、毎日少しずつ進むとしたら、それはいつか思うようにはいかないつらい日が来るのは当然のように思います。老いも病気と考えればどうでしょうか。元気なうちに思うようにはいかない時を想像して、一歩一歩何をなすべきか(いわゆる養生、運動など)考えることが大切です。そうすれば遅らせることができるように思います。漢方相談をしていると、病名をいただく本当の病気と老いという病気を重ね、つらい日々を過ごしているのが実情です。老いの中で病気を抱えるのが当たり前のように思っているようですが、老いという病気を意識することで、本当の病気に対してしっかり向き合えるのではないでしょうか。これを漢方では、未病対策として行っております。そしてもう一つ人生最後まで修行のようですが、他者の手を煩わせることがあるならば、どなたにも「ありがとうございました。」といえる自分でありたいと思います。人生床に臥せっても、修行はできるようです。お店が良寛さんの五合庵であれば、もっとよいのですが…。

本当の宝とは…

最近の子宝相談について、晩婚化が進み子供さんを望んだ年齢が適齢期を過ぎてしまい妊娠しづらい体になっている場合が多いのではないでしょうか。その治療も長期に及び疲れきっている方もいらっしゃいます。当店に見える方々はお医者様の指導のもと治療されている方がほとんどですが、さらに漢方でもと思っていらっしゃいます。その前に必ずご夫婦にこのようなお話をすることにしています。「子宝にまさる宝があります。」それは今後二人が子宝に恵まれる人生であれ、また二人で歩む人生であれ、喜びも悲しみも是非二人で味わい尽くし、絆を強め信頼しあえる夫婦になってください。それが最も試されるのが、実はこの子宝なんですよ。この経験で得たものが、子宝にまさる宝だと思います。結婚して夫婦になったと思わないでください。こういう経験を乗り越えて夫婦になるのです。相手がいるだけで何も語らず安心できるはずです。どうか本当の宝を二人でつかんでください。