薬やまと堂

東京都青梅市 漢方のことなら薬やまと堂

うめ爺とうめ子の楽しく優しい日々

相談余話

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相談余話

住まいは人なり

奥会津の玉梨温泉で出会った一人の老人宅にお伺いすることが出来ました。そこは、南会津町前沢にある前沢集落です。徳造さん宅も伝統的な茅葺のりっぱな曲家です。中門作りで母屋と馬屋が一体となっていました。入口を入ると土間があり、徳造さんと奥様がいろりの前で出迎えてくださいました。徳造さんは六人兄弟の長男として家を守るためにこの地に残って、東京へ出た兄弟達に援助をしてきたそうです。先祖代々からの物はこの家しか残らなかったそうです。兄弟姉妹も今は東京で立派にやっているそうで、温泉巡りをしている今が一番幸せと言っていました。いろりのある後ろに大黒柱が黒く光っています。「立派な大黒柱は徳を積んだ徳造さんにぴったりですね。住まいは人なりと申しますが、この曲家は徳造さんと奥様にしか合いません。」本当に素晴らしい住まいを拝見させていただいてありがとうございました。

店主

生老病死

朝早く一本の電話がかかってきました。Aさんからの電話でした。「あんた、やっぽり肺に腫瘍があって、どうも悪性らしいよ。進行の早いガンだって。この年まで生きて来て、悔いはないけどできたらオリンピックまでは生きたいね。」とおっしゃっておりました。いつもと違う咳が続き、悪化傾向にあったので受診を勧めたのがこの結果でした。会社を経営されているときは従業員のみなさんの食事を作り、会社を娘さん夫婦に譲ってからは、会長婦人として若夫婦とお孫さんの食事作りをしながら、カラオケ、輪投げ、旅行と精一杯人生を楽しんでいたようです。そして、「もう治療はしないことにしたよ。私が決めたことだから。でもね、あんたの漢方はもう少し続けることにするよ。出来たらオリンピックまでは続けるよ。なんか見繕っておいてよ。カラオケの帰りに寄るよ。」とおっしゃっていました。Aさんに私が励まされているようです。生きて、老いて、病気を患い死んでいく運命にある。人間が生きてきた証を少しでも理解し、寄り添い、安心感を与えられれば、ということをAさんによって教えられているようです。Aさんもやはり私の先生です。オリンピックと言わず、次のオリンピックまで寄り添いたいものです。Aさんに感謝、感謝です。

店主

藁屋に名馬をつなぐ

五月に入り春休みをいただき、秘湯を求めて今回は福島県の高湯温泉に行ってきました。お天気にも恵まれ、車の渋滞もなく、磐梯吾妻スカイライン沿いにある湯治場的雰囲気の残った吾妻屋さんにお世話になりました。昔ながらの古びた湯治宿のようです。豊かな自然に囲まれた山の湯につかり、人の優しさに触れたいい旅になりました。女将さん始め、従業員の方々のお客を思いやる姿勢には頭が下がる思いです。ある従業員の方が「私たちのまかない料理は女将さんが作ってくださるんですよ。」とおっしゃっていました。まさにこんな言葉が思い起こされました。「藁屋に名馬をつなぐ」。震災を乗り越え140年も守り続けてきた宿にこの女将です。個人個人の個性を大事にして寄り添いいたわり思いやる心。なんとも旅の出会いで学ぶことができた幸せいっぱいの旅でした。心の中で「感謝、感謝です。」また来たいものです。

店主

いつも良寛さん

ゴールデンウィークを前にして今年は寒暖差の激しい春を迎えております。
相談に見えるお客様や相談電話もこの時期にしては多いようです。
いつも申しておりますが、身体の弱い方、ご高齢の方にとっては「弱い」「高齢」というだけで、何らかの不調という病を抱えております。そこに気候変動の激しさが追い打ちをかけるようです。ストレスや寝不足により慢性的な疾患を抱えているお客様にとってはたいへんつらい時期のようです。「弱い」「高齢」という不調を病とするならば気候変動の寒暖差もいろいろな形で不調をもたらす病です。二重の病に苦しんでいるのが、「身体の弱い人」「ご高齢の方」ではないでしょうか。
「君看ずや双眼の色 語らざれば憂いなき似たり」
何も言わなくていいですよ。多くの苦労を素直に受け止め乗り越えてこられたお顔です。お顔を拝見するだけで十分です。ありがとうございました。

店主

専門家はすべてをあわせる

3月もお彼岸を過ぎると暖かさとともに春を感じる季節を迎えます。桜も今年は早いようです。待ち遠しいですね。当店では16年前に購入した車の買い換えをするときがきたようです。15万キロ以上乗り愛着のある車でしたが高齢者のお客様が多くなり、山間部の配達も増えていることもあり買い換えを決断しました。どのメーカーを選んでもある程度のオプションの装備により車とはなんと高額かとびっくりするばかりです。そんなときあるメーカーのHさんがお店に見えパンフレットを届けてくださいました。いつもはこちらからの車選びによる見積もりでしたが、Hさんからのおすすめの車のようです。「山間部によく行く」「高齢者を乗せる」「運転者の年齢」等「経済性」「セーフティ装備の充実」をおっしゃっていただき、「この車が一番社長の望んでいる車のように思います。」と言われました。まさに私がお店で漢方薬を選定することと同じように私の性格、趣味、嗜好など全てを含めて選んでくださいました。どの世界にも「あなたに合った薬を車」を提示できる専門家がいるようです。何も言わずそれでお願いしますと申しました。Hさんも自信に満ちた顔でうなずいていました。薬でいえばあなたに合わせた薬がよく効くことで特効薬になります。おすすめの車はこれから私にとって一番の愛車になることでしょう。Hさんに出会えたことそして私に一番よい車を選んでいただいたことに感謝するばかりです。ありがとうございました。

店主

正師を得らざれば学ばざるにしかず

立春が過ぎても厳しい寒さが続いております。春の気配を感じることはできませんが、北鎌倉の松岡山東慶寺へ行ってきます。師の眠る墓苑に手を合わせ、1年を祈願します。そこには多くを学んだ先生方も眠っております。なんとも幸せな時を過ごすことのできる場所です。花の寺でもあり、福寿草、それに行く頃には紅梅、白梅も見頃になるでしょう。いつ行っても季節の花で彩られています。禅「ZEN」として世界に広めた鈴木大拙も眠っております。それぞれのお墓の前で禅問答ではないですが、「今、ここを読んでおりますが、本当の意味は何ですか?」と話しかけております。「ああ、そこには深い意味は無いが先に進みなさい。」または「そこはもう少し考えてください。」と言われているようです。本当にありがたいことです。1日が墓苑巡りで終わってしまいます。墓苑を出る頃には体が冷え切っておりますので、よく先生と立ち寄った鉢の木で「精進料理」をいただくのも楽しみの一つです。ここの梅も素敵です。1年で最も充実した日になります。先生と語り合った日々それに多くを学んだ先生方にまた教えを乞うのはなんとも幸せです。姿形はなけれども私の心の中ではみなさんはお元気なようです。どうぞ、また墓苑でお会いできることを楽しみにしております。まだまだ学ぶことはたくさんありますので、よろしくお願いいたします。恋人に会いに行くような気持ちで楽しみにしております。早くお会いしたいものです。 二月吉日

店主

本質を見極める

1月下旬雪の残る厳しい寒さの中、Kさんは元気に来店してくださいました。すでに70歳は超えておりますが、今ではとても若々しく、健康そのものです。以前相談を受けたご質問は、「いろいろお化粧を買い求め、試してみたが最近は本来の肌色との違いが目立ち老けて見えるようになり、どこか体の中に問題があるのかもしれない。」ということでした。60歳を超える頃から体内の老化が顔に表れるようになります。まさしく顔は内臓の働きを表す「鏡」です。体内環境をよくする漢方療法と「和顔愛語」それに「「化粧断食」をお願いしました。気・血・水の巡りもよくなり、顔の皮膚も健康を取り戻し、いつも笑顔に美しい言葉を続けていくことで、今ではとても健康的な肌色で誰よりも健康美人です。ほぼ10年を過ぎますが、今も家では「化粧断食」をしているそうです。外出の時だけ「少しの口紅」と「和顔愛語」で十分だそうです。年齢を感じさせないKさんは病気をよせつけない生き方を見つけたようです。こちらが感謝・感謝です。それでは今晩は、NHK-Eテレ放送のやまと尼寺の3人を楽しく見たいものです。

店主

大身は大身に非ず

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。今年も元旦は東北の秘湯で迎えました。乳頭温泉郷の奥にある蟹場温泉です。吹雪舞う雪の回廊を登り、バスの終点にその宿はありました。湯治宿の面影を今に残し、雪に埋もれながらひっそりと息づいているようです。一年間を振り返り、自分と向き合う場所としては、申し分のない場所のようです。大雪でも露天風呂への道は確保されており、早速長靴をお借りして、出かけてみました。雪に埋もれたブナやタケカンバの森の中に湯けむりをあげている露天風呂唐子の湯がありました。雪がふぶき湯けむりを巻き込んで、竜が天に昇るようです。自然が出迎えてくれたようです。極楽、極楽です。ただ、湯につかり、眠り、そして深山の山懐に抱かれて、しんしんと降る雪景色に一冊の本でもあれば十分ですね。「心に能所の限量無き、是を大身と名づく」という言葉が思い浮かばれました。仕事がら救っていく自分と救われる相手という立場があるように、漢方相談という壁を作ってしまう。一人の人間として融通無碍に交わることができれば、どんな関わりにもそこに壁を作るのは自分であり、その壁を作らず受け入れることができればもっと多くの人が救われるように思います。漢方相談の壁を無くし、人間としての交わりができるようにしていくことでさらに多くの方を救えるのではないでしょうか。「大身は大身に非ず、是を大身と名づく」これを今年のテーマとしたいと思います。大自然の雄大さに触れて感謝、感謝です。さあ今年も始まります。やはり唐子の湯は最高ですね。

店主

無事

寒い冬を迎え、今年も終わりが近づく中、忘れることのできない本があります。髙田郁著「出世花」と「蓮華の契り」です。どのような境遇でも自分の一生をかけられる仕事に誇りを持ってやり遂げていく。そこに人間としての素晴らしさがあるようです。「出世花」の「正縁さんと正念さん」や「蓮の愛」に見られる「貞心尼さんと良寛さん」のように師と弟子としてともに温かく見守る情愛がなんともいえません。そういう環境があれば、人間は必ず独り立ちしていくのではないでしょうか。一人の立派な人間が作られると思います。病を抱えている方にどれほど寄り添え、手を差し伸べられたか反省するばかりですが、今年の締め括りとして、「無事」という言葉を皆様に受け取ってもらえれば何よりです。「無事」新年を迎えることをお祈りしております。一年間ありがとうございました。

店主

今日も修行です。
秋の深まりとともに、教えを受けた先生が偲ばれます。「自分を知るとは、生かされているばかりの自分を知れということで、誰がどれだけ自分を生かしてくれる力を与えてくださっているかを知ることだそうです。」そしてその量が多ければ多いほど、自分が深まっていること、つまりどれだけ進歩したかの目安になるとおっしゃっていました。それがまた、終生の修行とも言っております。『健』は丈夫な身体のために、『康』は穏やかな心を保つために、どれだけそれらに心砕いて努めたかによって、人間として成長するのではないでしょうか。それは「何もできない自分を生かすために、全ての働きが自分を支えてくださる。」と言うことでもあります。修行に終わりはないと思います。今年も残り少なくなってきましたが、多くの方に支えられながら、今日も修行に励みたいと思います。