薬やまと堂

東京都青梅市 漢方のことなら薬やまと堂

うめ爺とうめ子の楽しく優しい日々

相談余話

HOME  相談余話

相談余話

自然の声を聞け

昨年も多くの方のご相談を賜り最善を尽くしてまいりました。新年も新たに頑張っていきますのでよろしくお願い致します。毎年恒例になりましたが、雪を求め東北の宮沢賢治の古里でもある岩手花巻の大沢温泉で新年を迎えました。とても暖かい朝ですが、雪が舞い、茅葺の菊水舘の温度計は-5度です。今でも多くの方が自炊しながら温泉を楽しんでおります。部屋の壁はあってもないように隣の声が当たり前のように聞こえてきます。一年間の農作業を終えて一家総出で家財布団を持ち込み、湯治に来たようです。何とも言えない家族のだんらんがあるようです。私の部屋の窓から聞こえる微かな風の音、雪が楽しそうに舞っています。古き良き時代の情緒があります。与えられて当たり前の生活から、ここでは温泉以外全て自分で行わないと成立しません。コイン式のガス代一つ使えません。ここには何一つ温泉以外はないのです。茅葺の菊水舘は古くから何も変わってないのです。部屋にも風が入り、ストーブの火が揺らいでいます。温泉に入らないと耐えられない寒さです。しかし、ここには静寂があります。ガラス越しに見える大沢の湯はまるで極楽のようです。風が吹き荒れ、雪が舞い、ガラスが震えていますが、全てのものが自分に何を教えようとしているのか、もう一度耳をすまして聞き届けたいと思います。都会では聞こえない声が、ここでは聞こえています。そしてまた今年も自然から学んだことを相談に活かしていきたいと思います。ここ南部藩茅葺の舘から皆様の健康を心より願っております。

体とは病気の容れもの
山田無文老師説話集を読んでいて、千利休さんについて書かれていましたので、ご紹介します。「茶の湯とは湯を沸かして茶をたてて飲むばかりなるものと知るべし」という言葉を遺しております。この言葉通りではだれでも茶の湯を楽しむことができるようですね。これを漢方の考え方に置き換えてはどうでしょうか。同じ風邪でも「体力があり充実した方」「体力がなくやせ衰えた方」ではおのずと漢方薬は違ってきます。さらにその人のあらゆる状況を加味して漢方薬を選定します。まさしく個人の尊重ということになります。千利休さんのお言葉もその人その人に合わせたお茶をたてることができて、初めて茶の湯を楽しむことができるのではないでしょうか。優しいお言葉のようですが、実は厳しい言葉のように思います。相手の方のすべてを理解して、その人に合わせたお茶を立てて初めて茶の湯というものが成立するようです。茶道とはまさしく道を極めることなんですね。茶の湯を楽しむことはまだですが、漢方薬の選定は極めていきたいものです。いよいよ12月です。寒さも厳しくなります・漢方相談もいよいよ本番です。
冬への生体防御
霜月(しもつき・11月)というのに、暖冬の影響でしょうか、体調を崩されている方が多いように思います。当店に相談に見られるお客様の中には風邪をこじらせてなかなか治らず、相談に見えるお客様もいらっしゃいます。感染性の風邪であれば、お医者様の方で十分対処してもらえますが、どうも気温差、温度差、さらには花粉等からアレルギー反応を起こし微熱があり、だるく風邪様症状いわゆる非感染性の風邪で長引いているように思われます。健康の方でも体力が落ちていたり、普段から体力のない方、何らかの基礎疾患をかかえている方などは、風邪様症状が長引いている場合が多いように思います。まずは、養生です。温かいものをよく噛んで食する。体を冷やさないようにする。睡眠時間を確保する。そして適当な散歩などは気分転換にもなります。漢方では衰えた体力を補う補剤などで対処できます。寒い冬をひかえ、しっかり夏の疲れをとっておきましょう。それが冬への対処であり、冬への生体防御になります。青梅近郊で捕らえられた二頭のクマさんも冬をしっかり乗り越えたかったのかもしれませんね。
我以外皆我師⑤
北鎌倉、東慶寺の墓苑も今年はすでに秋の草花がいたる所に見られます。川田順(歌人)先生は辻井喬著「虹の岬」でご存知の方もいると思います。西行法師・川田順先生は私の心の師でもあります。見えない「もの」を見るにはとても良い場所です。一人一人のお客様を考える場所でもあります。今月はお母さまと毎月見えるS君について考えたいと思います。9月の下旬にお母さまが一人で見えましたで私の心配が当たったようです。S君は虚弱体質で胃下垂があり、とてもやせた身体です。夏の盛りの時はとても元気で安心しておりましたが、気温の低下とともに夏の疲れが出たのでしょう。お布団に入ったきり、ほとんど食事もせず寝ているとのことです。中学3年生の受験生でもありますので、余計心配されたのだと思います。胃下垂が強く出ますと普段でも食事の吸収が良くない状態がさらに悪化します。それは絶食に近い状態かもしれません。まずは本人が食べたいものをできれば温かいものを「よく噛んで」少しずつお腹に入れてください。お粥はだめです。お粥はお粥のままお腹に入ります。よく噛むことの方が吸収が良いのです。見えない「もの」を見ることです。お布団に入ってよく眠ることは、本人にとって一番の回復方法なのです。きっと元気になって出てきますよ。S君を守るためにご夫婦で「中学3年生にもなって」という言葉は通用しません。すべてはS君の成長に合わせて「ものごと」を考えてあげることが本当の幸せにつながると思います。うちの「あきちゃん」や「稀勢の里」のように長い目で見てやってください。
我以外皆我師④

読書の秋には少し早いかもしれませんが、一冊の本を紹介したいと思います。「蓮の愛」良寛と貞心尼―著者は市川信夫さんです。良寛さんの人なりを知る上でも、また貞心さんがとても素敵な女性であることが偲ばれる本です。本の内容には触れませんが、このような「愛」があれば、超高齢化時代を乗り越えるヒントがあるように思います。現在介護等にたずさわる人にも心の励みになる本ではないかと思います。さて、良寛さんも当店に見えるお客様も共通して苦しんでいる症状に胃下垂があります。夏場の盛りには意外と症状は出ませんが、いったん秋の気配を感じるころになると、夏の暑さからくる疲れとともに、この症状が出てきます。不調を訴える方が日に日に多くなります。体質的には、低体温と内臓全般の働きが落ちているのが胃下垂の人ですから、気温が下降するにしたがって、体質的な症状が出てきます。さらに暑さからくる内臓の疲れもありますので、その不調は秋の方が強くなるようです。この体質の方々は、「食欲の秋」とは反対に胃腸の疲れを早くとるために、温かいものをとること。食事は養生を兼ねて通常の7~8割程度にして、よく噛んでください。水分補給も取り過ぎず、温かいものをとりましょう。ほうじ茶や番茶などがよいでしょう。睡眠時間も秋の夜長といえども、なるべく長くとるのが良いでしょう。体の抵抗力も落ちておりますので、風邪にも注意が必要です。秋の疲れをとることが、冬を無事に乗り越える秘訣だと思います。「君看ずや双眼の色、語らざれば憂いなき似たり」良寛さんも心配しておりますよ。

我以外皆我師③
今年は梅雨明けが遅れているようですね。昨年より相談が多いように思います。体力のある方でも、この時期特有の温度、湿度の変化によって、体力が消耗してくることで不快な症状が現れてきます。いわゆる「熱中症」として理解することで、休息、水分補給、適切な温度管理等で重症化を防ぐことができますが、もし「夏風邪」をひいているという前提で理解すると、すでに消耗期に入っており、ややだるい、軽い頭痛や微熱っぽい、食欲がない等の上にこの時期特有の条件が重なることで実は、「熱中症」として重症化するように思います。体力のある方でも、夏風邪が入ることでこのような症状を起こします。ましてや漢方相談の対象者である、虚弱な方、老人の方、さらには、症状をかかえている方にとっては「熱中症」は死に至らしめる大きな要因になります。見えないものを見るということはなかなか難しいものですが、何度でも申し上げます。夏風邪をひくことで「熱中症」は重症化します。早めの夏風邪対策をとることが健康な方でも重要であり、漢方相談を受けている方にとっては「風邪は万病の元凶」として理解していただきたいものです。「照脚脚下ですね。自分自身を見つめて、健(丈夫な体)と康(穏やかな心)を心がけていただきたいものだと思います。さあ、今月も見えない敵(風邪)とのたたかいに頑張りたいと思います。
我以外皆我師②
今回は、Aクリニックの奥様の友人からの相談がありました。「職場でのストレスで切れてしまい他の方々を不愉快な思いにさせてしまう。」「同じ事を繰り返す自分に情けなく落ち込む毎日です。」という内容です。まさしく照顧脚下です。前回も相談余話で書きましたが、「相互依存」による自分自身の心を見失っている状態です。人を頼って思うようにいかず、ストレスをためるか、頼らずに生きて与えられることに感謝するか、どう考えるかです。頼る体質には甘えと思い上がりがあり、常に不幸と不満が付きまとうようです。難しいことですが、出来る限り、頼る気持ちを抑えて、一人で生きるという基本を身に付けてほしいものです。「人間誰しも頼れるものは自分の二本の足以外にはない。」と覚悟すべきだと思います。これも漢方以前のお話かもしれません。自らも姿勢を正して感謝の心を徹底して培いたいと思っております。
我以外皆我師①
一年に一度ですが、お会いするのを楽しみにしているお客様が今年も無事に見えてくれました。30年ほどのお付き合いになります。多くの不定愁訴(身体的不調感)をかかえ、医療機関等の検査を受けても異常が見つからず、精神的な問題ではないかといわれたそうです。この御婦人は身体的特徴は見るからに痩せ細って、目だけがギョロギョロしておりますが、精神的には誰よりもしっかりしております。まさしく胃下垂タイプです。かなり胃腸機能が低下し、全般には内臓全部が下垂な内臓下垂タイプであると判断し、そのお話をさせていただきました。お話をしているうちにはじめて自分の体質というものを理解されたようです。すべてはこの大地から物事が始まるといいますが、この御婦人も胃腸の改善から内臓全般の機能が良くなり、今に至ります。御年88歳になったと申しておりました。どこに行っても受け止めてももらえないいわゆる半健康体(機能低下)は当店においては一番多く見えている人たちです。良寛さんも晩年は胃腸で苦しんだそうです。「君看ずや双眼の色、語らざれば憂いなき似たり」、病と向き合い、それを乗り越えた人のお顔は、誰よりも笑顔が素敵だそうです。この御婦人も、良寛さんも私の師匠ですね。
感謝の花とは…
今日、朝一番に秩父から見えたAさんは腎不全を患いお医者様からは透析の話もでております。それでも一縷の望みをかけて当店に見えております。悩み苦しみを乗り越えて穏やかな笑顔がとても素敵です。もう心は決まってらっしゃるようです。まさしく内から輝くという事を実践されております。自我を発揮させよという事ではなくて、生かされて生きている事への感謝とそれに対するお返しとしての義務の事のように思います。義務は内に秘めたものです。たった一人の私に与えられた生命には私には私にしか咲かせない感謝の花があるようです。私も笑顔を持って感謝としております。Aさんも笑顔をもって感謝の花を咲かせているようです。そろそろ山吹の花の季節です。気品とは優しさのある人物。その人はこの花の精の様に思われます。
健康で長生きは長息をする

最近相談をしていて気になることがあります。病をかかえて自律神経を安定させることは難しいことですが、相談者の多くの人が「呼吸」が浅いように思います。呼吸数は多いのですが、肺の入り口で循環させて、肺の奥まで酸素がいきわたらないようです。これでは、肉体も精神も安定しません。まずは「意識して吐く」訓練をしてください。医食同源の真弓先生によると、一分当たり18回以下に呼吸をとどめることがよいと述べられています。呼吸数を18回にすると体温は18の2倍の36度、その36度の2倍にした72というのは、脈拍数、さらにその2倍144は、最高血圧の標準値になるそうです。そして最高血圧を144以下に抑えたいなら呼吸数も18回以内に抑えなければならないと述べられております。意識して呼吸数をコントロールすることが、健康しいては長生きの秘訣かもしれませんね。まずは、呼吸法を健康になるための基本にしてはどうでしょうか。大いなる働きの中にこんなにまで小さな私が今も生かされているとしみじみに思うこの頃です。