新緑の美しい季節になりました。今日も病という重い荷を背負って当店に来店してくださいます。駅よりまっすぐな一本道ですが、350mあります。その歩みはゆっくりですが、私も店の外に出て、その歩みを見守ります。毎日のことですが、相談のヒントになることがあります。年齢を重ねることも病いと言うことであれば、そこに病名をいただく病いが重なればやりきれないのが本当ではないでしょうか。それでも精一杯の笑顔で来店してくださいます。何も語らなくても、その笑顔がすべてを教えてくれているようです。
「君看ずや双眼の色 語らざれば憂いなきに似たり」 良寛
多くの病いを乗り越えてきた人の顔は、何も語らなくても誰よりもすてきですね。 と言っているようです。お顔には「体の全神経」が表現されているそうです。まだまだ理解し得ないところがあります。宮本武蔵にはなれませんが、千の稽古、万の稽古を重ねる鍛練をしていくしかないと思います。不眠からストレス、そして風邪、風邪は万病の元です。夏の風邪は冬の風邪のように症状がはっきりしませんので注意が必要です。またこの風邪によって熱中症は重症化するものと思います。さらに注意が必要かと思います。さあ~、今日も真剣勝負です。
里山の山肌の影にひっそりと黄色の花びらが、幾重も見られるようになりました。今年も山吹の季節が来たようです。粗末な環境の中にも凜とした気品と優しさ、そしてひっそりとした佇まいに花の精を感じるようです。あの方は今どうしておられるか、元気な日々を過ごしていることを願いながら…、そして今もってSOSを発信して病に苦しんでいらっしゃる方々を思わざるを得ません。
七重八重花は咲けども山吹の
実のひとつだになきぞ悲しき
誰の歌なのかは知りませんが、きっとその人は生きる喜びを知らせに来た花の精のように思います。さあ今日も相談を通して「安心」というお土産を持って帰っていただければ幸いです。
人生も年を重ねることで、やはり若いときのようにはいかないものですね。物忘れは毎日のことであり、体調も日々違うことがわかるようです。このようにして老化というものが、毎日少しずつ進むとしたら、それはいつか思うようにはいかないつらい日が来るのは当然のように思います。老いも病気と考えればどうでしょうか。元気なうちに思うようにはいかない時を想像して、一歩一歩何をなすべきか(いわゆる養生、運動など)考えることが大切です。そうすれば遅らせることができるように思います。漢方相談をしていると、病名をいただく本当の病気と老いという病気を重ね、つらい日々を過ごしているのが実情です。老いの中で病気を抱えるのが当たり前のように思っているようですが、老いという病気を意識することで、本当の病気に対してしっかり向き合えるのではないでしょうか。これを漢方では、未病対策として行っております。そしてもう一つ人生最後まで修行のようですが、他者の手を煩わせることがあるならば、どなたにも「ありがとうございました。」といえる自分でありたいと思います。人生床に臥せっても、修行はできるようです。お店が良寛さんの五合庵であれば、もっとよいのですが…。
最近の子宝相談について、晩婚化が進み子供さんを望んだ年齢が適齢期を過ぎてしまい妊娠しづらい体になっている場合が多いのではないでしょうか。その治療も長期に及び疲れきっている方もいらっしゃいます。当店に見える方々はお医者様の指導のもと治療されている方がほとんどですが、さらに漢方でもと思っていらっしゃいます。その前に必ずご夫婦にこのようなお話をすることにしています。「子宝にまさる宝があります。」それは今後二人が子宝に恵まれる人生であれ、また二人で歩む人生であれ、喜びも悲しみも是非二人で味わい尽くし、絆を強め信頼しあえる夫婦になってください。それが最も試されるのが、実はこの子宝なんですよ。この経験で得たものが、子宝にまさる宝だと思います。結婚して夫婦になったと思わないでください。こういう経験を乗り越えて夫婦になるのです。相手がいるだけで何も語らず安心できるはずです。どうか本当の宝を二人でつかんでください。
昨年も多くの方のご相談を賜り最善を尽くしてまいりました。新年も新たに頑張っていきますのでよろしくお願い致します。毎年恒例になりましたが、雪を求め東北の宮沢賢治の古里でもある岩手花巻の大沢温泉で新年を迎えました。とても暖かい朝ですが、雪が舞い、茅葺の菊水舘の温度計は-5度です。今でも多くの方が自炊しながら温泉を楽しんでおります。部屋の壁はあってもないように隣の声が当たり前のように聞こえてきます。一年間の農作業を終えて一家総出で家財布団を持ち込み、湯治に来たようです。何とも言えない家族のだんらんがあるようです。私の部屋の窓から聞こえる微かな風の音、雪が楽しそうに舞っています。古き良き時代の情緒があります。与えられて当たり前の生活から、ここでは温泉以外全て自分で行わないと成立しません。コイン式のガス代一つ使えません。ここには何一つ温泉以外はないのです。茅葺の菊水舘は古くから何も変わってないのです。部屋にも風が入り、ストーブの火が揺らいでいます。温泉に入らないと耐えられない寒さです。しかし、ここには静寂があります。ガラス越しに見える大沢の湯はまるで極楽のようです。風が吹き荒れ、雪が舞い、ガラスが震えていますが、全てのものが自分に何を教えようとしているのか、もう一度耳をすまして聞き届けたいと思います。都会では聞こえない声が、ここでは聞こえています。そしてまた今年も自然から学んだことを相談に活かしていきたいと思います。ここ南部藩茅葺の舘から皆様の健康を心より願っております。