薬やまと堂

東京都青梅市 漢方のことなら薬やまと堂

うめ爺とうめ子の楽しく優しい日々

相談余話

HOME  相談余話

相談余話

青梅の誉れ
梅雨入りを目前にして、鈴木牧之の代表作「北越雪譜」で知られている最後の秘境秋山郷に日本秘湯を守る会の湯宿「川津屋」さんを訪ねました。新潟寄りの郷の入口とはいえ、川津渓谷沿いの秘湯そのままの環境です。ここに来る目的の一つに、我が郷土の誉れ、小説家の吉川英治さんが長滞在していたそうです。そのお話をしていたので、宿の女将さんの計らいで吉川英治さん滞在の部屋を用意してくださいました。また食事の時にはそのとき使用していた机も見せていただきました。そしていつも私が戒めとしている言葉に「我以外皆我師」と書かれた書があることに感動しました。ふるさとに帰ってきたおもてなしといい、この宿の温かさに吉川英治さんも同じ思いだったかもしれません。本当に自然の美しさと情が身にしみる宿でした。
今日も真剣勝負です。

新緑の美しい季節になりました。今日も病という重い荷を背負って当店に来店してくださいます。駅よりまっすぐな一本道ですが、350mあります。その歩みはゆっくりですが、私も店の外に出て、その歩みを見守ります。毎日のことですが、相談のヒントになることがあります。年齢を重ねることも病いと言うことであれば、そこに病名をいただく病いが重なればやりきれないのが本当ではないでしょうか。それでも精一杯の笑顔で来店してくださいます。何も語らなくても、その笑顔がすべてを教えてくれているようです。

「君看ずや双眼の色 語らざれば憂いなきに似たり」 良寛

多くの病いを乗り越えてきた人の顔は、何も語らなくても誰よりもすてきですね。 と言っているようです。お顔には「体の全神経」が表現されているそうです。まだまだ理解し得ないところがあります。宮本武蔵にはなれませんが、千の稽古、万の稽古を重ねる鍛練をしていくしかないと思います。不眠からストレス、そして風邪、風邪は万病の元です。夏の風邪は冬の風邪のように症状がはっきりしませんので注意が必要です。またこの風邪によって熱中症は重症化するものと思います。さらに注意が必要かと思います。さあ~、今日も真剣勝負です。

山吹への思い

里山の山肌の影にひっそりと黄色の花びらが、幾重も見られるようになりました。今年も山吹の季節が来たようです。粗末な環境の中にも凜とした気品と優しさ、そしてひっそりとした佇まいに花の精を感じるようです。あの方は今どうしておられるか、元気な日々を過ごしていることを願いながら…、そして今もってSOSを発信して病に苦しんでいらっしゃる方々を思わざるを得ません。

七重八重花は咲けども山吹の
実のひとつだになきぞ悲しき

誰の歌なのかは知りませんが、きっとその人は生きる喜びを知らせに来た花の精のように思います。さあ今日も相談を通して「安心」というお土産を持って帰っていただければ幸いです。

老いも病気と思えば…

人生も年を重ねることで、やはり若いときのようにはいかないものですね。物忘れは毎日のことであり、体調も日々違うことがわかるようです。このようにして老化というものが、毎日少しずつ進むとしたら、それはいつか思うようにはいかないつらい日が来るのは当然のように思います。老いも病気と考えればどうでしょうか。元気なうちに思うようにはいかない時を想像して、一歩一歩何をなすべきか(いわゆる養生、運動など)考えることが大切です。そうすれば遅らせることができるように思います。漢方相談をしていると、病名をいただく本当の病気と老いという病気を重ね、つらい日々を過ごしているのが実情です。老いの中で病気を抱えるのが当たり前のように思っているようですが、老いという病気を意識することで、本当の病気に対してしっかり向き合えるのではないでしょうか。これを漢方では、未病対策として行っております。そしてもう一つ人生最後まで修行のようですが、他者の手を煩わせることがあるならば、どなたにも「ありがとうございました。」といえる自分でありたいと思います。人生床に臥せっても、修行はできるようです。お店が良寛さんの五合庵であれば、もっとよいのですが…。

本当の宝とは…

最近の子宝相談について、晩婚化が進み子供さんを望んだ年齢が適齢期を過ぎてしまい妊娠しづらい体になっている場合が多いのではないでしょうか。その治療も長期に及び疲れきっている方もいらっしゃいます。当店に見える方々はお医者様の指導のもと治療されている方がほとんどですが、さらに漢方でもと思っていらっしゃいます。その前に必ずご夫婦にこのようなお話をすることにしています。「子宝にまさる宝があります。」それは今後二人が子宝に恵まれる人生であれ、また二人で歩む人生であれ、喜びも悲しみも是非二人で味わい尽くし、絆を強め信頼しあえる夫婦になってください。それが最も試されるのが、実はこの子宝なんですよ。この経験で得たものが、子宝にまさる宝だと思います。結婚して夫婦になったと思わないでください。こういう経験を乗り越えて夫婦になるのです。相手がいるだけで何も語らず安心できるはずです。どうか本当の宝を二人でつかんでください。

莫妄想
大寒も過ぎ、寒さもいよいよ本番です。今日も朝から風が強くとても寒い一日になりそうです。朝一番のお電話は、新年はじめてお会いするAさんです。毎月お伺いのお電話の後、市内からタクシーで来店されます。もう初回の来店から2年が過ぎようとしています。それこそ大腸に腫瘍が見つかりお医者様の治療に専念しておりましたが、ご高齢のため手術は回避され、毎月の経過観察になっております。当店において体力向上と排泄を促すことを目的として漢方薬を服用しております。2年前のやせ衰えた身体が今ではとてもふくよかになり、顔色もとても良いようです。排泄もうまくいっているようです。まずは、生活の質の向上(QOL)のために一日一日を大切に生活しているようです。ご高齢のB子さんも、中年のCさんも同じように一日一日を大切に生活しております。まさに莫妄想(まくもうそう)、明日という日を妄想(わずらうこと)なく、今日という日を全身全霊で生き抜こうとしております。とても素敵なお顔をしている姿に言葉にならない美しさがあります。自分自身と向き合い、明日を煩うことなく、而今(いま)を生きているのですね。我以外皆我師(先生)です。それと稀勢の里も莫妄想、一心不乱にやり遂げたんですね。おめでとうございます!
自然の声を聞け

昨年も多くの方のご相談を賜り最善を尽くしてまいりました。新年も新たに頑張っていきますのでよろしくお願い致します。毎年恒例になりましたが、雪を求め東北の宮沢賢治の古里でもある岩手花巻の大沢温泉で新年を迎えました。とても暖かい朝ですが、雪が舞い、茅葺の菊水舘の温度計は-5度です。今でも多くの方が自炊しながら温泉を楽しんでおります。部屋の壁はあってもないように隣の声が当たり前のように聞こえてきます。一年間の農作業を終えて一家総出で家財布団を持ち込み、湯治に来たようです。何とも言えない家族のだんらんがあるようです。私の部屋の窓から聞こえる微かな風の音、雪が楽しそうに舞っています。古き良き時代の情緒があります。与えられて当たり前の生活から、ここでは温泉以外全て自分で行わないと成立しません。コイン式のガス代一つ使えません。ここには何一つ温泉以外はないのです。茅葺の菊水舘は古くから何も変わってないのです。部屋にも風が入り、ストーブの火が揺らいでいます。温泉に入らないと耐えられない寒さです。しかし、ここには静寂があります。ガラス越しに見える大沢の湯はまるで極楽のようです。風が吹き荒れ、雪が舞い、ガラスが震えていますが、全てのものが自分に何を教えようとしているのか、もう一度耳をすまして聞き届けたいと思います。都会では聞こえない声が、ここでは聞こえています。そしてまた今年も自然から学んだことを相談に活かしていきたいと思います。ここ南部藩茅葺の舘から皆様の健康を心より願っております。

体とは病気の容れもの
山田無文老師説話集を読んでいて、千利休さんについて書かれていましたので、ご紹介します。「茶の湯とは湯を沸かして茶をたてて飲むばかりなるものと知るべし」という言葉を遺しております。この言葉通りではだれでも茶の湯を楽しむことができるようですね。これを漢方の考え方に置き換えてはどうでしょうか。同じ風邪でも「体力があり充実した方」「体力がなくやせ衰えた方」ではおのずと漢方薬は違ってきます。さらにその人のあらゆる状況を加味して漢方薬を選定します。まさしく個人の尊重ということになります。千利休さんのお言葉もその人その人に合わせたお茶をたてることができて、初めて茶の湯を楽しむことができるのではないでしょうか。優しいお言葉のようですが、実は厳しい言葉のように思います。相手の方のすべてを理解して、その人に合わせたお茶を立てて初めて茶の湯というものが成立するようです。茶道とはまさしく道を極めることなんですね。茶の湯を楽しむことはまだですが、漢方薬の選定は極めていきたいものです。いよいよ12月です。寒さも厳しくなります・漢方相談もいよいよ本番です。
冬への生体防御
霜月(しもつき・11月)というのに、暖冬の影響でしょうか、体調を崩されている方が多いように思います。当店に相談に見られるお客様の中には風邪をこじらせてなかなか治らず、相談に見えるお客様もいらっしゃいます。感染性の風邪であれば、お医者様の方で十分対処してもらえますが、どうも気温差、温度差、さらには花粉等からアレルギー反応を起こし微熱があり、だるく風邪様症状いわゆる非感染性の風邪で長引いているように思われます。健康の方でも体力が落ちていたり、普段から体力のない方、何らかの基礎疾患をかかえている方などは、風邪様症状が長引いている場合が多いように思います。まずは、養生です。温かいものをよく噛んで食する。体を冷やさないようにする。睡眠時間を確保する。そして適当な散歩などは気分転換にもなります。漢方では衰えた体力を補う補剤などで対処できます。寒い冬をひかえ、しっかり夏の疲れをとっておきましょう。それが冬への対処であり、冬への生体防御になります。青梅近郊で捕らえられた二頭のクマさんも冬をしっかり乗り越えたかったのかもしれませんね。
我以外皆我師⑤
北鎌倉、東慶寺の墓苑も今年はすでに秋の草花がいたる所に見られます。川田順(歌人)先生は辻井喬著「虹の岬」でご存知の方もいると思います。西行法師・川田順先生は私の心の師でもあります。見えない「もの」を見るにはとても良い場所です。一人一人のお客様を考える場所でもあります。今月はお母さまと毎月見えるS君について考えたいと思います。9月の下旬にお母さまが一人で見えましたで私の心配が当たったようです。S君は虚弱体質で胃下垂があり、とてもやせた身体です。夏の盛りの時はとても元気で安心しておりましたが、気温の低下とともに夏の疲れが出たのでしょう。お布団に入ったきり、ほとんど食事もせず寝ているとのことです。中学3年生の受験生でもありますので、余計心配されたのだと思います。胃下垂が強く出ますと普段でも食事の吸収が良くない状態がさらに悪化します。それは絶食に近い状態かもしれません。まずは本人が食べたいものをできれば温かいものを「よく噛んで」少しずつお腹に入れてください。お粥はだめです。お粥はお粥のままお腹に入ります。よく噛むことの方が吸収が良いのです。見えない「もの」を見ることです。お布団に入ってよく眠ることは、本人にとって一番の回復方法なのです。きっと元気になって出てきますよ。S君を守るためにご夫婦で「中学3年生にもなって」という言葉は通用しません。すべてはS君の成長に合わせて「ものごと」を考えてあげることが本当の幸せにつながると思います。うちの「あきちゃん」や「稀勢の里」のように長い目で見てやってください。