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相談余話

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今日も吉日

今年を振り返る季節になったようです。余命を宣告され少しでも生活の質(QOL)向上を願って当店に見えたU子さんも今では「今月も元気でしたよ。感謝、感謝の赤飯なのでお裾分けです。」と言って風呂敷に包んで毎月持ってきてくださいます。こちらが感謝、感謝です。U子さんと出会って「健康とは」いったい何なのかもう一度考えるようになりました。「健」は体の身体の有り様で、「康」は心の有り様ですが、どうも「健」と「康」は同じ大きさではなくU子さんのように「康」によって「健」を支えている。それも心の有り様の上に身体を優しく乗せて「健康」という状態を保っているからこそ、毎日充実した日を過ごしているのではないでしょうか。「康」によって「健」は支えられ、心の有り様によって本当の幸せがあるのかもしれません。U子さんもまた私の人生の師匠のようです。まだまだ、よろしくお願いします。

店主

薬は信じて服用するもの

9月の休みを利用して、秘湯中の秘湯である岩地にある小さな漁村の民宿青風園さんにお世話になりました。高台にあるお風呂からの眺めは素晴らしく、青い空に海岸線の美しさ、打ち寄せる波の音そしてさわやかな風の声です。自ら洞にこもり修行する修行僧が見た光景が空と海であったように「空海」という人の名がわかるような気がしました。「空海さん」がもたらした一つに薬があります。その薬の服用についても仏教の教えと同じように「信じること」が大事なことだとおっしゃっています。「空海さん」のような修行を極めた人格者にはとうていなれそうもないですが、その姿勢は忘れず、明日も精進、修行に励みたいと思います。目的の一つである伊豆下田の郊外にある仏教美術館は清掃日にあたり休館しておりましたが、青風園の女将さん、息子さんにお会いできたことが大変幸せでありました。ありがとうございました。

店主

病を経て適職へ

8月も中旬を過ぎた頃、いつもは妹さんと一緒に見えるCさんが、一人で訪ねてきました。精神的な病で、5年ほど前から妹さん宅にお世話になっているCさんです。初めて相談に見えたときのCさんは、「こんな身体になって、妹に迷惑をかけているので早く死ぬのが一番よいのです。」とおっしゃっていました。出る言葉はいつも同じです。お医者さんもずいぶん困っていたようです。Cさんに「Cさんの身体は生きるため一生懸命に働いていますよ。Cさんの頭だけが死にたい、死にたいと言っているだけでそれは身体に対して失礼な話ですね。もう一度冷静な頭になって、考え直してください。一日一日が日にち薬と思って漢方を服用してください。」とお話ししました。そして最近は、「死ぬのはやはり怖いですよ。考えれば考えるほど怖いですよ。」とおっしゃっています。「だったら一生懸命生きることの方が気が楽ですよ。死ぬことを忘れて一生懸命生きる方がきっといいと思いますよ。」と話しました。今回のCさんの相談はずいぶんよくなってきたのでもう一度何か人の役に立つ仕事について、少しでも妹さんの負担を減らして、出来れば妹の家を出て生活したいと話していました。5年もの間、死を見つめて来られて病を克服されたのですから、いよいよ人助けをする番ですね。今から宗教家は無理としても、お寺さんの聖(ひじり)さんでも、墓守人でも死と向き合わざるを得ない人達に希望を与える仕事に就けばおそらく皆さんはCさんに出会って本当に救われると思います。私が言うのもおかしいですが、Cさんの顔を見ているだけで私が救われるようです。ありがとうございました。

店主

住まいは人なり

奥会津の玉梨温泉で出会った一人の老人宅にお伺いすることが出来ました。そこは、南会津町前沢にある前沢集落です。徳造さん宅も伝統的な茅葺のりっぱな曲家です。中門作りで母屋と馬屋が一体となっていました。入口を入ると土間があり、徳造さんと奥様がいろりの前で出迎えてくださいました。徳造さんは六人兄弟の長男として家を守るためにこの地に残って、東京へ出た兄弟達に援助をしてきたそうです。先祖代々からの物はこの家しか残らなかったそうです。兄弟姉妹も今は東京で立派にやっているそうで、温泉巡りをしている今が一番幸せと言っていました。いろりのある後ろに大黒柱が黒く光っています。「立派な大黒柱は徳を積んだ徳造さんにぴったりですね。住まいは人なりと申しますが、この曲家は徳造さんと奥様にしか合いません。」本当に素晴らしい住まいを拝見させていただいてありがとうございました。

店主

生老病死

朝早く一本の電話がかかってきました。Aさんからの電話でした。「あんた、やっぽり肺に腫瘍があって、どうも悪性らしいよ。進行の早いガンだって。この年まで生きて来て、悔いはないけどできたらオリンピックまでは生きたいね。」とおっしゃっておりました。いつもと違う咳が続き、悪化傾向にあったので受診を勧めたのがこの結果でした。会社を経営されているときは従業員のみなさんの食事を作り、会社を娘さん夫婦に譲ってからは、会長婦人として若夫婦とお孫さんの食事作りをしながら、カラオケ、輪投げ、旅行と精一杯人生を楽しんでいたようです。そして、「もう治療はしないことにしたよ。私が決めたことだから。でもね、あんたの漢方はもう少し続けることにするよ。出来たらオリンピックまでは続けるよ。なんか見繕っておいてよ。カラオケの帰りに寄るよ。」とおっしゃっていました。Aさんに私が励まされているようです。生きて、老いて、病気を患い死んでいく運命にある。人間が生きてきた証を少しでも理解し、寄り添い、安心感を与えられれば、ということをAさんによって教えられているようです。Aさんもやはり私の先生です。オリンピックと言わず、次のオリンピックまで寄り添いたいものです。Aさんに感謝、感謝です。

店主

藁屋に名馬をつなぐ

五月に入り春休みをいただき、秘湯を求めて今回は福島県の高湯温泉に行ってきました。お天気にも恵まれ、車の渋滞もなく、磐梯吾妻スカイライン沿いにある湯治場的雰囲気の残った吾妻屋さんにお世話になりました。昔ながらの古びた湯治宿のようです。豊かな自然に囲まれた山の湯につかり、人の優しさに触れたいい旅になりました。女将さん始め、従業員の方々のお客を思いやる姿勢には頭が下がる思いです。ある従業員の方が「私たちのまかない料理は女将さんが作ってくださるんですよ。」とおっしゃっていました。まさにこんな言葉が思い起こされました。「藁屋に名馬をつなぐ」。震災を乗り越え140年も守り続けてきた宿にこの女将です。個人個人の個性を大事にして寄り添いいたわり思いやる心。なんとも旅の出会いで学ぶことができた幸せいっぱいの旅でした。心の中で「感謝、感謝です。」また来たいものです。

店主

いつも良寛さん

ゴールデンウィークを前にして今年は寒暖差の激しい春を迎えております。
相談に見えるお客様や相談電話もこの時期にしては多いようです。
いつも申しておりますが、身体の弱い方、ご高齢の方にとっては「弱い」「高齢」というだけで、何らかの不調という病を抱えております。そこに気候変動の激しさが追い打ちをかけるようです。ストレスや寝不足により慢性的な疾患を抱えているお客様にとってはたいへんつらい時期のようです。「弱い」「高齢」という不調を病とするならば気候変動の寒暖差もいろいろな形で不調をもたらす病です。二重の病に苦しんでいるのが、「身体の弱い人」「ご高齢の方」ではないでしょうか。
「君看ずや双眼の色 語らざれば憂いなき似たり」
何も言わなくていいですよ。多くの苦労を素直に受け止め乗り越えてこられたお顔です。お顔を拝見するだけで十分です。ありがとうございました。

店主

専門家はすべてをあわせる

3月もお彼岸を過ぎると暖かさとともに春を感じる季節を迎えます。桜も今年は早いようです。待ち遠しいですね。当店では16年前に購入した車の買い換えをするときがきたようです。15万キロ以上乗り愛着のある車でしたが高齢者のお客様が多くなり、山間部の配達も増えていることもあり買い換えを決断しました。どのメーカーを選んでもある程度のオプションの装備により車とはなんと高額かとびっくりするばかりです。そんなときあるメーカーのHさんがお店に見えパンフレットを届けてくださいました。いつもはこちらからの車選びによる見積もりでしたが、Hさんからのおすすめの車のようです。「山間部によく行く」「高齢者を乗せる」「運転者の年齢」等「経済性」「セーフティ装備の充実」をおっしゃっていただき、「この車が一番社長の望んでいる車のように思います。」と言われました。まさに私がお店で漢方薬を選定することと同じように私の性格、趣味、嗜好など全てを含めて選んでくださいました。どの世界にも「あなたに合った薬を車」を提示できる専門家がいるようです。何も言わずそれでお願いしますと申しました。Hさんも自信に満ちた顔でうなずいていました。薬でいえばあなたに合わせた薬がよく効くことで特効薬になります。おすすめの車はこれから私にとって一番の愛車になることでしょう。Hさんに出会えたことそして私に一番よい車を選んでいただいたことに感謝するばかりです。ありがとうございました。

店主

正師を得らざれば学ばざるにしかず

立春が過ぎても厳しい寒さが続いております。春の気配を感じることはできませんが、北鎌倉の松岡山東慶寺へ行ってきます。師の眠る墓苑に手を合わせ、1年を祈願します。そこには多くを学んだ先生方も眠っております。なんとも幸せな時を過ごすことのできる場所です。花の寺でもあり、福寿草、それに行く頃には紅梅、白梅も見頃になるでしょう。いつ行っても季節の花で彩られています。禅「ZEN」として世界に広めた鈴木大拙も眠っております。それぞれのお墓の前で禅問答ではないですが、「今、ここを読んでおりますが、本当の意味は何ですか?」と話しかけております。「ああ、そこには深い意味は無いが先に進みなさい。」または「そこはもう少し考えてください。」と言われているようです。本当にありがたいことです。1日が墓苑巡りで終わってしまいます。墓苑を出る頃には体が冷え切っておりますので、よく先生と立ち寄った鉢の木で「精進料理」をいただくのも楽しみの一つです。ここの梅も素敵です。1年で最も充実した日になります。先生と語り合った日々それに多くを学んだ先生方にまた教えを乞うのはなんとも幸せです。姿形はなけれども私の心の中ではみなさんはお元気なようです。どうぞ、また墓苑でお会いできることを楽しみにしております。まだまだ学ぶことはたくさんありますので、よろしくお願いいたします。恋人に会いに行くような気持ちで楽しみにしております。早くお会いしたいものです。 二月吉日

店主

本質を見極める

1月下旬雪の残る厳しい寒さの中、Kさんは元気に来店してくださいました。すでに70歳は超えておりますが、今ではとても若々しく、健康そのものです。以前相談を受けたご質問は、「いろいろお化粧を買い求め、試してみたが最近は本来の肌色との違いが目立ち老けて見えるようになり、どこか体の中に問題があるのかもしれない。」ということでした。60歳を超える頃から体内の老化が顔に表れるようになります。まさしく顔は内臓の働きを表す「鏡」です。体内環境をよくする漢方療法と「和顔愛語」それに「「化粧断食」をお願いしました。気・血・水の巡りもよくなり、顔の皮膚も健康を取り戻し、いつも笑顔に美しい言葉を続けていくことで、今ではとても健康的な肌色で誰よりも健康美人です。ほぼ10年を過ぎますが、今も家では「化粧断食」をしているそうです。外出の時だけ「少しの口紅」と「和顔愛語」で十分だそうです。年齢を感じさせないKさんは病気をよせつけない生き方を見つけたようです。こちらが感謝・感謝です。それでは今晩は、NHK-Eテレ放送のやまと尼寺の3人を楽しく見たいものです。

店主

大身は大身に非ず

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。今年も元旦は東北の秘湯で迎えました。乳頭温泉郷の奥にある蟹場温泉です。吹雪舞う雪の回廊を登り、バスの終点にその宿はありました。湯治宿の面影を今に残し、雪に埋もれながらひっそりと息づいているようです。一年間を振り返り、自分と向き合う場所としては、申し分のない場所のようです。大雪でも露天風呂への道は確保されており、早速長靴をお借りして、出かけてみました。雪に埋もれたブナやタケカンバの森の中に湯けむりをあげている露天風呂唐子の湯がありました。雪がふぶき湯けむりを巻き込んで、竜が天に昇るようです。自然が出迎えてくれたようです。極楽、極楽です。ただ、湯につかり、眠り、そして深山の山懐に抱かれて、しんしんと降る雪景色に一冊の本でもあれば十分ですね。「心に能所の限量無き、是を大身と名づく」という言葉が思い浮かばれました。仕事がら救っていく自分と救われる相手という立場があるように、漢方相談という壁を作ってしまう。一人の人間として融通無碍に交わることができれば、どんな関わりにもそこに壁を作るのは自分であり、その壁を作らず受け入れることができればもっと多くの人が救われるように思います。漢方相談の壁を無くし、人間としての交わりができるようにしていくことでさらに多くの方を救えるのではないでしょうか。「大身は大身に非ず、是を大身と名づく」これを今年のテーマとしたいと思います。大自然の雄大さに触れて感謝、感謝です。さあ今年も始まります。やはり唐子の湯は最高ですね。

店主

無事

寒い冬を迎え、今年も終わりが近づく中、忘れることのできない本があります。髙田郁著「出世花」と「蓮華の契り」です。どのような境遇でも自分の一生をかけられる仕事に誇りを持ってやり遂げていく。そこに人間としての素晴らしさがあるようです。「出世花」の「正縁さんと正念さん」や「蓮の愛」に見られる「貞心尼さんと良寛さん」のように師と弟子としてともに温かく見守る情愛がなんともいえません。そういう環境があれば、人間は必ず独り立ちしていくのではないでしょうか。一人の立派な人間が作られると思います。病を抱えている方にどれほど寄り添え、手を差し伸べられたか反省するばかりですが、今年の締め括りとして、「無事」という言葉を皆様に受け取ってもらえれば何よりです。「無事」新年を迎えることをお祈りしております。一年間ありがとうございました。

店主

今日も修行です。

秋の深まりとともに、教えを受けた先生が偲ばれます。「自分を知るとは、生かされているばかりの自分を知れということで、誰がどれだけ自分を生かしてくれる力を与えてくださっているかを知ることだそうです。」そしてその量が多ければ多いほど、自分が深まっていること、つまりどれだけ進歩したかの目安になるとおっしゃっていました。それがまた、終生の修行とも言っております。『健』は丈夫な身体のために、『康』は穏やかな心を保つために、どれだけそれらに心砕いて努めたかによって、人間として成長するのではないでしょうか。それは「何もできない自分を生かすために、全ての働きが自分を支えてくださる。」と言うことでもあります。修行に終わりはないと思います。今年も残り少なくなってきましたが、多くの方に支えられながら、今日も修行に励みたいと思います。

希望と安心

お彼岸も過ぎる頃になると、夏の残暑からも解放され、過ごしやすくなってきました。昨日実家からの帰り道でしょうか、Cさんが店前を自転車で元気に会釈をしながら通り過ぎていきました。うれしそうなお顔に安心しました。もう20年のおつきあいになるでしょうか。そのCさんは甲状腺機能に異常があって、若いときからお薬を服用しております。お薬の服用で一応、検査結果は安定しており、経過観察になっていたようです。当店に見えたときの訴えは、「汗や動悸が気になる」「疲れやすい」などでした。甲状腺の機能状態は問題がなくても不快な症状は続いていたのです。生活の質(QOL)を少しでもあげて、快適な生活を求めて来店されました。甲状腺ホルモンが多い場合もあれば、少ない場合も不快な症状として「寒がり」「無気力」「むくみ」など自覚症状として表れます。Cさんは、漢方薬と免疫機能調整作用のある物質も一緒に服用しているため、自覚症状もなくたいへん元気なようです。自己抗体を抑制することは、抗リン脂質抗体症候群(不育症の原因の一つ)にもたいへん喜ばれております。昨日より今日、そして明日へと「希望のある」「安心できる」日が来ることを目標に精進、精進です。

規則を超えたところにある本当の規則

8月15日から4日間夏休みをいただき、米沢八湯の一つである大平温泉・滝見屋さんへ行ってきました。吾妻山嶺の市道の山林を車で登りきり、頂上に車を止め、そこから最上川源流に向かってトレッキングです。このような場所に宿があるのか心配でしたが、ひっそりと山陰に秘境の一軒宿がありました。何よりも宿の方の笑顔に救われました。今まで訪れた宿の中では、やはり秘湯中の秘湯ではないでしょうか。何もない中にあるのは、自然の美しい変化と、豊富な温泉です。地獄にも仏とはこのような場所に来て体験できるのですね。二日間の滞在が夢のようでした。そしてこのような秘湯の宿を守っている女将さんをはじめ、スタッフの方々には感謝、感謝しかないようです。秘湯の宿めぐりで、はじめて秘湯とは何かをつかめたようです。名勝、火焔の滝は望めませんでしたが、おそらく忘れることのできない貴重な体験になったことは間違いないと思います。そして何かとは、「規則を超えたところに本当の規則がある」ということではないでしょうか。ありがとうございました。

沈黙こそ真実の言葉

病と向き合うお客様に季節は関係ないようです。この暑さの中に多くの方が当店に見えてご相談されます。この季節は、電話で今日の状態をお聞きして、「いつもと違う」という方には2、3日様子を見てからご来店してもらうようにしております。くれぐれも無理をせず熱中症には気をつけていただきたいものです。相談に見えて理路整然とお話をされる方もいれば、とつとつと一言一言を選んでお話しされる方、表現の仕方はそれぞれに違います。どの方にも共通する大事なことは、お話を終えた後の沈黙です。言葉にならない「余白」にこそ、その人の真実があるように思います。悩みの深さ、病の深さを感じることができます。相談に見えて言葉は少なくとも十分に伝わるものがあります。心を込めて話した短い言葉にも、相手の心にしっかり届いておりますので安心してください。どうぞ、沈黙もよいものですよ。

青梅の誉れ

梅雨入りを目前にして、鈴木牧之の代表作「北越雪譜」で知られている最後の秘境秋山郷に日本秘湯を守る会の湯宿「川津屋」さんを訪ねました。新潟寄りの郷の入口とはいえ、川津渓谷沿いの秘湯そのままの環境です。ここに来る目的の一つに、我が郷土の誉れ、小説家の吉川英治さんが長滞在していたそうです。そのお話をしていたので、宿の女将さんの計らいで吉川英治さん滞在の部屋を用意してくださいました。また食事の時にはそのとき使用していた机も見せていただきました。そしていつも私が戒めとしている言葉に「我以外皆我師」と書かれた書があることに感動しました。ふるさとに帰ってきたおもてなしといい、この宿の温かさに吉川英治さんも同じ思いだったかもしれません。本当に自然の美しさと情が身にしみる宿でした。

今日も真剣勝負です。

新緑の美しい季節になりました。今日も病という重い荷を背負って当店に来店してくださいます。駅よりまっすぐな一本道ですが、350mあります。その歩みはゆっくりですが、私も店の外に出て、その歩みを見守ります。毎日のことですが、相談のヒントになることがあります。年齢を重ねることも病いと言うことであれば、そこに病名をいただく病いが重なればやりきれないのが本当ではないでしょうか。それでも精一杯の笑顔で来店してくださいます。何も語らなくても、その笑顔がすべてを教えてくれているようです。

「君看ずや双眼の色 語らざれば憂いなきに似たり」 良寛

多くの病いを乗り越えてきた人の顔は、何も語らなくても誰よりもすてきですね。 と言っているようです。お顔には「体の全神経」が表現されているそうです。まだまだ理解し得ないところがあります。宮本武蔵にはなれませんが、千の稽古、万の稽古を重ねる鍛練をしていくしかないと思います。不眠からストレス、そして風邪、風邪は万病の元です。夏の風邪は冬の風邪のように症状がはっきりしませんので注意が必要です。またこの風邪によって熱中症は重症化するものと思います。さらに注意が必要かと思います。さあ~、今日も真剣勝負です。

山吹への思い

里山の山肌の影にひっそりと黄色の花びらが、幾重も見られるようになりました。今年も山吹の季節が来たようです。粗末な環境の中にも凜とした気品と優しさ、そしてひっそりとした佇まいに花の精を感じるようです。あの方は今どうしておられるか、元気な日々を過ごしていることを願いながら…、そして今もってSOSを発信して病に苦しんでいらっしゃる方々を思わざるを得ません。

七重八重花は咲けども山吹の
実のひとつだになきぞ悲しき

誰の歌なのかは知りませんが、きっとその人は生きる喜びを知らせに来た花の精のように思います。さあ今日も相談を通して「安心」というお土産を持って帰っていただければ幸いです。

老いも病気と思えば…

人生も年を重ねることで、やはり若いときのようにはいかないものですね。物忘れは毎日のことであり、体調も日々違うことがわかるようです。このようにして老化というものが、毎日少しずつ進むとしたら、それはいつか思うようにはいかないつらい日が来るのは当然のように思います。老いも病気と考えればどうでしょうか。元気なうちに思うようにはいかない時を想像して、一歩一歩何をなすべきか(いわゆる養生、運動など)考えることが大切です。そうすれば遅らせることができるように思います。漢方相談をしていると、病名をいただく本当の病気と老いという病気を重ね、つらい日々を過ごしているのが実情です。老いの中で病気を抱えるのが当たり前のように思っているようですが、老いという病気を意識することで、本当の病気に対してしっかり向き合えるのではないでしょうか。これを漢方では、未病対策として行っております。そしてもう一つ人生最後まで修行のようですが、他者の手を煩わせることがあるならば、どなたにも「ありがとうございました。」といえる自分でありたいと思います。人生床に臥せっても、修行はできるようです。お店が良寛さんの五合庵であれば、もっとよいのですが…。

本当の宝とは…

最近の子宝相談について、晩婚化が進み子供さんを望んだ年齢が適齢期を過ぎてしまい妊娠しづらい体になっている場合が多いのではないでしょうか。その治療も長期に及び疲れきっている方もいらっしゃいます。当店に見える方々はお医者様の指導のもと治療されている方がほとんどですが、さらに漢方でもと思っていらっしゃいます。その前に必ずご夫婦にこのようなお話をすることにしています。「子宝にまさる宝があります。」それは今後二人が子宝に恵まれる人生であれ、また二人で歩む人生であれ、喜びも悲しみも是非二人で味わい尽くし、絆を強め信頼しあえる夫婦になってください。それが最も試されるのが、実はこの子宝なんですよ。この経験で得たものが、子宝にまさる宝だと思います。結婚して夫婦になったと思わないでください。こういう経験を乗り越えて夫婦になるのです。相手がいるだけで何も語らず安心できるはずです。どうか本当の宝を二人でつかんでください。

莫妄想まくもうそう

大寒も過ぎ、寒さもいよいよ本番です。今日も朝から風が強くとても寒い一日になりそうです。朝一番のお電話は、新年はじめてお会いするAさんです。毎月お伺いのお電話の後、市内からタクシーで来店されます。もう初回の来店から2年が過ぎようとしています。それこそ大腸に腫瘍が見つかりお医者様の治療に専念しておりましたが、ご高齢のため手術は回避され、毎月の経過観察になっております。当店において体力向上と排泄を促すことを目的として漢方薬を服用しております。2年前のやせ衰えた身体が今ではとてもふくよかになり、顔色もとても良いようです。排泄もうまくいっているようです。まずは、生活の質の向上(QOL)のために一日一日を大切に生活しているようです。ご高齢のB子さんも、中年のCさんも同じように一日一日を大切に生活しております。まさに莫妄想(まくもうそう)、明日という日を妄想(わずらうこと)なく、今日という日を全身全霊で生き抜こうとしております。とても素敵なお顔をしている姿に言葉にならない美しさがあります。自分自身と向き合い、明日を煩うことなく、而今(いま)を生きているのですね。我以外皆我師(先生)です。それと稀勢の里も莫妄想、一心不乱にやり遂げたんですね。おめでとうございます!

自然の声を聞け

昨年も多くの方のご相談を賜り最善を尽くしてまいりました。新年も新たに頑張っていきますのでよろしくお願い致します。毎年恒例になりましたが、雪を求め東北の宮沢賢治の古里でもある岩手花巻の大沢温泉で新年を迎えました。とても暖かい朝ですが、雪が舞い、茅葺の菊水舘の温度計は-5度です。今でも多くの方が自炊しながら温泉を楽しんでおります。部屋の壁はあってもないように隣の声が当たり前のように聞こえてきます。一年間の農作業を終えて一家総出で家財布団を持ち込み、湯治に来たようです。何とも言えない家族のだんらんがあるようです。私の部屋の窓から聞こえる微かな風の音、雪が楽しそうに舞っています。古き良き時代の情緒があります。与えられて当たり前の生活から、ここでは温泉以外全て自分で行わないと成立しません。コイン式のガス代一つ使えません。ここには何一つ温泉以外はないのです。茅葺の菊水舘は古くから何も変わってないのです。部屋にも風が入り、ストーブの火が揺らいでいます。温泉に入らないと耐えられない寒さです。しかし、ここには静寂があります。ガラス越しに見える大沢の湯はまるで極楽のようです。風が吹き荒れ、雪が舞い、ガラスが震えていますが、全てのものが自分に何を教えようとしているのか、もう一度耳をすまして聞き届けたいと思います。都会では聞こえない声が、ここでは聞こえています。そしてまた今年も自然から学んだことを相談に活かしていきたいと思います。ここ南部藩茅葺の舘から皆様の健康を心より願っております。

体とは病気の容れもの

山田無文老師説話集を読んでいて、千利休さんについて書かれていましたので、ご紹介します。「茶の湯とは湯を沸かして茶をたてて飲むばかりなるものと知るべし」という言葉を遺しております。この言葉通りではだれでも茶の湯を楽しむことができるようですね。これを漢方の考え方に置き換えてはどうでしょうか。同じ風邪でも「体力があり充実した方」「体力がなくやせ衰えた方」ではおのずと漢方薬は違ってきます。さらにその人のあらゆる状況を加味して漢方薬を選定します。まさしく個人の尊重ということになります。千利休さんのお言葉もその人その人に合わせたお茶をたてることができて、初めて茶の湯を楽しむことができるのではないでしょうか。優しいお言葉のようですが、実は厳しい言葉のように思います。相手の方のすべてを理解して、その人に合わせたお茶を立てて初めて茶の湯というものが成立するようです。茶道とはまさしく道を極めることなんですね。茶の湯を楽しむことはまだですが、漢方薬の選定は極めていきたいものです。いよいよ12月です。寒さも厳しくなります・漢方相談もいよいよ本番です。

冬への生体防御

霜月(しもつき・11月)というのに、暖冬の影響でしょうか、体調を崩されている方が多いように思います。当店に相談に見られるお客様の中には風邪をこじらせてなかなか治らず、相談に見えるお客様もいらっしゃいます。感染性の風邪であれば、お医者様の方で十分対処してもらえますが、どうも気温差、温度差、さらには花粉等からアレルギー反応を起こし微熱があり、だるく風邪様症状いわゆる非感染性の風邪で長引いているように思われます。健康の方でも体力が落ちていたり、普段から体力のない方、何らかの基礎疾患をかかえている方などは、風邪様症状が長引いている場合が多いように思います。まずは、養生です。温かいものをよく噛んで食する。体を冷やさないようにする。睡眠時間を確保する。そして適当な散歩などは気分転換にもなります。漢方では衰えた体力を補う補剤などで対処できます。寒い冬をひかえ、しっかり夏の疲れをとっておきましょう。それが冬への対処であり、冬への生体防御になります。青梅近郊で捕らえられた二頭のクマさんも冬をしっかり乗り越えたかったのかもしれませんね。

我以外皆我師⑤

北鎌倉、東慶寺の墓苑も今年はすでに秋の草花がいたる所に見られます。川田順(歌人)先生は辻井喬著「虹の岬」でご存知の方もいると思います。西行法師・川田順先生は私の心の師でもあります。見えない「もの」を見るにはとても良い場所です。一人一人のお客様を考える場所でもあります。今月はお母さまと毎月見えるS君について考えたいと思います。9月の下旬にお母さまが一人で見えましたで私の心配が当たったようです。S君は虚弱体質で胃下垂があり、とてもやせた身体です。夏の盛りの時はとても元気で安心しておりましたが、気温の低下とともに夏の疲れが出たのでしょう。お布団に入ったきり、ほとんど食事もせず寝ているとのことです。中学3年生の受験生でもありますので、余計心配されたのだと思います。胃下垂が強く出ますと普段でも食事の吸収が良くない状態がさらに悪化します。それは絶食に近い状態かもしれません。まずは本人が食べたいものをできれば温かいものを「よく噛んで」少しずつお腹に入れてください。お粥はだめです。お粥はお粥のままお腹に入ります。よく噛むことの方が吸収が良いのです。見えない「もの」を見ることです。お布団に入ってよく眠ることは、本人にとって一番の回復方法なのです。きっと元気になって出てきますよ。S君を守るためにご夫婦で「中学3年生にもなって」という言葉は通用しません。すべてはS君の成長に合わせて「ものごと」を考えてあげることが本当の幸せにつながると思います。うちの「あきちゃん」や「稀勢の里」のように長い目で見てやってください。

我以外皆我師④

読書の秋には少し早いかもしれませんが、一冊の本を紹介したいと思います。「蓮の愛」良寛と貞心尼―著者は市川信夫さんです。良寛さんの人なりを知る上でも、また貞心さんがとても素敵な女性であることが偲ばれる本です。本の内容には触れませんが、このような「愛」があれば、超高齢化時代を乗り越えるヒントがあるように思います。現在介護等にたずさわる人にも心の励みになる本ではないかと思います。さて、良寛さんも当店に見えるお客様も共通して苦しんでいる症状に胃下垂があります。夏場の盛りには意外と症状は出ませんが、いったん秋の気配を感じるころになると、夏の暑さからくる疲れとともに、この症状が出てきます。不調を訴える方が日に日に多くなります。体質的には、低体温と内臓全般の働きが落ちているのが胃下垂の人ですから、気温が下降するにしたがって、体質的な症状が出てきます。さらに暑さからくる内臓の疲れもありますので、その不調は秋の方が強くなるようです。この体質の方々は、「食欲の秋」とは反対に胃腸の疲れを早くとるために、温かいものをとること。食事は養生を兼ねて通常の7~8割程度にして、よく噛んでください。水分補給も取り過ぎず、温かいものをとりましょう。ほうじ茶や番茶などがよいでしょう。睡眠時間も秋の夜長といえども、なるべく長くとるのが良いでしょう。体の抵抗力も落ちておりますので、風邪にも注意が必要です。秋の疲れをとることが、冬を無事に乗り越える秘訣だと思います。「君看ずや双眼の色、語らざれば憂いなき似たり」良寛さんも心配しておりますよ。

我以外皆我師③

今年は梅雨明けが遅れているようですね。昨年より相談が多いように思います。体力のある方でも、この時期特有の温度、湿度の変化によって、体力が消耗してくることで不快な症状が現れてきます。いわゆる「熱中症」として理解することで、休息、水分補給、適切な温度管理等で重症化を防ぐことができますが、もし「夏風邪」をひいているという前提で理解すると、すでに消耗期に入っており、ややだるい、軽い頭痛や微熱っぽい、食欲がない等の上にこの時期特有の条件が重なることで実は、「熱中症」として重症化するように思います。体力のある方でも、夏風邪が入ることでこのような症状を起こします。ましてや漢方相談の対象者である、虚弱な方、老人の方、さらには、症状をかかえている方にとっては「熱中症」は死に至らしめる大きな要因になります。見えないものを見るということはなかなか難しいものですが、何度でも申し上げます。夏風邪をひくことで「熱中症」は重症化します。早めの夏風邪対策をとることが健康な方でも重要であり、漢方相談を受けている方にとっては「風邪は万病の元凶」として理解していただきたいものです。「照脚脚下ですね。自分自身を見つめて、健(丈夫な体)と康(穏やかな心)を心がけていただきたいものだと思います。さあ、今月も見えない敵(風邪)とのたたかいに頑張りたいと思います。

我以外皆我師②

今回は、Aクリニックの奥様の友人からの相談がありました。「職場でのストレスで切れてしまい他の方々を不愉快な思いにさせてしまう。」「同じ事を繰り返す自分に情けなく落ち込む毎日です。」という内容です。まさしく照顧脚下です。前回も相談余話で書きましたが、「相互依存」による自分自身の心を見失っている状態です。人を頼って思うようにいかず、ストレスをためるか、頼らずに生きて与えられることに感謝するか、どう考えるかです。頼る体質には甘えと思い上がりがあり、常に不幸と不満が付きまとうようです。難しいことですが、出来る限り、頼る気持ちを抑えて、一人で生きるという基本を身に付けてほしいものです。「人間誰しも頼れるものは自分の二本の足以外にはない。」と覚悟すべきだと思います。これも漢方以前のお話かもしれません。自らも姿勢を正して感謝の心を徹底して培いたいと思っております。

我以外皆我師①

一年に一度ですが、お会いするのを楽しみにしているお客様が今年も無事に見えてくれました。30年ほどのお付き合いになります。多くの不定愁訴(身体的不調感)をかかえ、医療機関等の検査を受けても異常が見つからず、精神的な問題ではないかといわれたそうです。この御婦人は身体的特徴は見るからに痩せ細って、目だけがギョロギョロしておりますが、精神的には誰よりもしっかりしております。まさしく胃下垂タイプです。かなり胃腸機能が低下し、全般には内臓全部が下垂な内臓下垂タイプであると判断し、そのお話をさせていただきました。お話をしているうちにはじめて自分の体質というものを理解されたようです。すべてはこの大地から物事が始まるといいますが、この御婦人も胃腸の改善から内臓全般の機能が良くなり、今に至ります。御年88歳になったと申しておりました。どこに行っても受け止めてももらえないいわゆる半健康体(機能低下)は当店においては一番多く見えている人たちです。良寛さんも晩年は胃腸で苦しんだそうです。「君看ずや双眼の色、語らざれば憂いなき似たり」、病と向き合い、それを乗り越えた人のお顔は、誰よりも笑顔が素敵だそうです。この御婦人も、良寛さんも私の師匠ですね。

感謝の花とは…

今日、朝一番に秩父から見えたAさんは腎不全を患いお医者様からは透析の話もでております。それでも一縷の望みをかけて当店に見えております。悩み苦しみを乗り越えて穏やかな笑顔がとても素敵です。もう心は決まってらっしゃるようです。まさしく内から輝くという事を実践されております。自我を発揮させよという事ではなくて、生かされて生きている事への感謝とそれに対するお返しとしての義務の事のように思います。義務は内に秘めたものです。たった一人の私に与えられた生命には私には私にしか咲かせない感謝の花があるようです。私も笑顔を持って感謝としております。Aさんも笑顔をもって感謝の花を咲かせているようです。そろそろ山吹の花の季節です。気品とは優しさのある人物。その人はこの花の精の様に思われます。

健康で長生きは長息をする

最近相談をしていて気になることがあります。病をかかえて自律神経を安定させることは難しいことですが、相談者の多くの人が「呼吸」が浅いように思います。呼吸数は多いのですが、肺の入り口で循環させて、肺の奥まで酸素がいきわたらないようです。これでは、肉体も精神も安定しません。まずは「意識して吐く」訓練をしてください。医食同源の真弓先生によると、一分当たり18回以下に呼吸をとどめることがよいと述べられています。呼吸数を18回にすると体温は18の2倍の36度、その36度の2倍にした72というのは、脈拍数、さらにその2倍144は、最高血圧の標準値になるそうです。そして最高血圧を144以下に抑えたいなら呼吸数も18回以内に抑えなければならないと述べられております。意識して呼吸数をコントロールすることが、健康しいては長生きの秘訣かもしれませんね。まずは、呼吸法を健康になるための基本にしてはどうでしょうか。大いなる働きの中にこんなにまで小さな私が今も生かされているとしみじみに思うこの頃です。

「より高い出会いを求めて…」漢方は哲学である。

この世に生まれて、人は生きていかなければならないという苦しみを背負っているようです。いわば、人間として生きてきたというだけで一重苦の病める者です。病人はこの一重苦の上に病むという悩みを持っており、まさしく二重苦であり、二重苦の病める者であることを知ったとき、さらに年老いることが三重苦であることを知ったとき、この人たちのために三倍の重みをもったお話ができるのか、今一度自分の「姿勢」「かまえ」「お顔」「話し言葉」を反省し、希望の光を差し上げられるように、漢方という枠を超えてより高い出会いを求めて日々精進してまいります。

何事も「 そく」のように… 」

厳しい寒さの中にも春の兆しを少しずつ感じるようになりました。冬というものを味わい尽くしてこそ、春の良さを一層感じるとは道元さんのお言葉にもあるようですが、そのような気持ちになれてはじめて生きている実感を味わえるのかと思いますが、いかがでしょうか。お香に「馬尾蚊足」という言葉があります。貴重な香木を大切に少しずつ使用するという戒めの言葉だということらしいです。漢方薬も貴重な生薬です。特に動物生薬には限りがあります。貴重な生薬を「馬尾蚊足」の言葉のように大切に使用しなければならないと思います。ちなみに当店では、お香(香木)薬玉(くすだま)は、漢方薬に準じて大切なものとして扱っております。来てよかったという言葉をいただきたく、毎日が精進、精進です。

重畳ちょうじょう(喜ばしいこと) 」

新年あけましておめでとうございます。関東平野は元旦から穏やかな暖かい日が続いているそうですが、秋田・宮城県境にある秋ノ宮温泉郷では暖冬とはいえ、毎日雪が降り、山に積もる変化にとんだ雪景色を楽しんでおります。静寂の中にも風の音とともに雪が舞い、幾重にも重なりあいこの上もなく心地良い音楽を聴いているようです。重畳(ちょうじょう)の世界いるようです。また、多くの生きるものの(叫び)も同時に聴こえてきます。世界のどこかで、日本のどこかで、そして人間の心の中のSOSを聞き逃さないように漢方相談を通して最善を尽くしてまいります。

「無事というお守り」

多くの相談を受け、今年もあと1ヶ月余りで終わりを告げようとしております。一人一人を思い返し健康に無事に過ごしておられるか思い返す日々であります。退院後、無事に過ごしていらっしゃるだろうか、また、リウマチの方は痛みが出ていないだろうか、てんかんのお嬢ちゃんはどうしているだろうかと心配はつきそうもありません。私も今年一年を無事に過ごせたことに感謝し、当店で相談を受けた方々一人一人に思いをいたし「無事というお守り」を受け取ってくださることを願って、そして来年も無事に、またお会いすることを楽しみに、残り1ヶ月頑張って行きたいと思います。

「南方録より」

利休曰く、「茶道とは湯を沸かし、茶をたて、飲むばかりなり」と南方録に記されておりますが、至極当たり前のことのように思われますが、私にはとても重要なことがかくされているように思います。主人は茶を受ける側の人の個性・性格・趣味・嗜好、その時の状況をかみして最善のお茶を差し上げるべきであるとおっしゃっているように思います。これはまさしく漢方の考えでもあり、個性の尊重ということを忘れてはならないということを噛みしめて、日々精進したいと思います。秋も深まり、朝・晩の気温差が大きくなってきました。体調不良の方も多く見うけられます。風邪もひきやすく、秋風は長引きますので、御注意してください。

「われ未だ木鶏たりえず」

大横綱の双葉山が「われ未だ木鶏たりえず」と言われたことを思い出しました。第一に「競わず」むやみに余計な競争心を起こしてはならない事、第二に「てらわず」自分を自分以上にみせてはならない事、第三に「瞳を動かさず」回りばかりを気にしてキョロキョロ見回さない事、第四に「静かなる事木鶏の如し」木彫りの鶏の様に静かに自己をみつめる事と双葉山の謙虚なお言葉にはこのような深い哲学があるのかといつも考えさせられます。双葉山にももちろん木鶏にもなれそうもありませんが、どうか「心の病」で苦しんでいる40代、50代の方が救われますように願って書きました。

「合わせることが特効薬」

この仕事について、絶対的なものはないように思います。ましてや特効薬という絶対的なものもないように思います。専門家は絶対を目指して研究を重ねています。この絶対に効かせる自信を会得するために、この世にたった一人しかいないあなたという人間の体質に全てを合わせるために全知全能をかけること、これが絶対ということですし、その技こそが専門家であります。あなたに合わせた薬が「よく効き合っているとき」それが特効薬だと思います。さあ、今月もあなたにお会いできることを願って…頑張ります。

「老いても自立こそ人生」

聴いていて気持ちの良い言葉と同様、見ていて良い顔だなという人に出会うことがあります。つい最近2年ぶりにお会いしたKさんは、80歳にして現役の営業マンです。いつもニコニコして、たいへん謙虚な方です。仕事一筋にやってこられ、多くの苦労を乗り越えて来て、何ともいえない良いお顔をされています。おそらく仕事がすべての生きがいにつながり、健康で若々しく、誰もがKさんのようでありたいと願うでしょう。そして大事なことは「人間誰しも頼れるものは、自分の二本の足以外はないものだと教えてくれるKさんです。」

我(われ)以外(いがい)皆(みな)我(わ)が師(し)

うつ傾向の若い男女の方の相談が増えているようです。一人で行う仕事量が多く、休日を返上してまでも頑張っておられる方が多く見られます。企業側の生産性の問題もあるでしょうが、もう少しゆとりがあってもよいのではないでしょうか。また、30代は、全身全霊で社会に立ち向かう時期です。おそらくほめられることはなく、悩みの時代でもあります。悩みの中にいるときには見えませんが、はたから見ていると、立派な人間がつくられる時なのです。どうか学ぶ姿勢を忘れず、「我以外皆我が師(先生)」という思いで、乗り越えてください。立派な人間になるための登竜門のようでもあります。できたらもっとな悩みぬき苦労してくださいと申しておきます。

「人格―言うに言われぬ風格」

いろいろな肩書をお持ちのお客様がご来店してくださいます。会社での役職がある方、医療、福祉についている方、あらゆる分野でのその人を示す肩書をお持ちです。人格という言葉の「人」の部分は、その人本来の人間性を現わしていると思います。では、「格」は世間でいわれている肩書だと思います。人間的にも素晴らしく、それに見合う肩書がおありの方はなかなかいないものですね。そのような方がいらしたとしたら、いわゆるー言うに言われる風格の持ち主ではないでしょうか。

「歩歩(ほほ)是(これ)道場(どうじょう)」

ある20歳になるアトピー性皮膚炎を患っている青年とその家族を想いながら、人間には良い環境が絶対必要であるが、悪い環境も必要であると思いました。悪い環境で悪くなったというのは、その人の性格の問題であり、そのような人は良い環境において、果たして良くなったかと言えば、甚だ疑わしい限りである。良い環境で文句を言う人はいないから、あえて甘えたり、いい気になってはいけないと戒めたい。しかし問題は、悪い環境に置かれた場合に、悪い環境こそが、人間を一つ一つ智慧あるものに育ててくれる一大要素だと思うのです。悪い環境が与えられた時は、まず第一に与えられて然るべき自分だということを反省するとともに、第二に全能の佛からの授かりものだということにすることで、このような青年が成長するいわゆる自立への第一歩となるのではないでしょうか。人生の修業はかくも厳しいものですね。

「親鸞のお言葉―同胞(命あるものすべて同じ)」

その日一日の相談を終えて、夕方のそうじをはじめるころ、店の前を通称バル君が通ります。彼はいつも笑顔で私に手を振りながら、何度もあいさつをしてくれます。土・日以外は作業所で一日働き、夕方の帰り道です。雨の日も風が強い日もいつもきまった時間に店の前を通りあいさつをしてくれます。私が見当たらない時は、店の前で立ち止まり、私のあいさつを待っていてくれます。いつも心の中で「無事」家路に着くことを祈りながら、挨拶を返しております。彼はダウン症をもち、自立への道を歩んでいるのです。がんばれ、がんばれです。私のお客様にも自らが病に苦しんでいながら、同病に苦しむ人のために、千羽鶴を折る決心をして、その数三十羽にして世を去った人がいます。千羽折る事と三十羽しか折れなかった事とまったく違いはありません。それどころか病める人が病める人に鶴を折るとは、何と尊い事であり、ただただ頭が下がるばかりです。生かされていることの過酷さ、そして生きることの美しさというものをあじわっている毎日です。バル君いつもありがとう。

「耳根清浄(じこんせいじょう)にして苦患(くかん)なし」①

身体が訴えているのに頭の方がわかろうとしない方
一代で鉄工所を築き上げたSさんは、やせた方でどちらかというと虚証タイプの方です。若くして独立し、奥様と二人で頑張って来られ、現在は150名の社員をかかえる中堅の鉄工所の会長をしております。現場は二人の息子さんにまかせておりますが、何ぶんにも一代で築いた人の特徴なのでしょう。何かと現場に行っては社員を励まし、アドバイスをしております。誰よりも早く出社し、全社員が帰るのを確認してからご本人も帰るそうです。奥様と二人で毎回会話を楽しみながら、相談に見えてくださいます。奥様は御主人の身体をいつも心配され、現場には行かないように言っているそうですが、聞き入れてくれないそうです。私も現在の年齢、体質的特徴をお話して、健康に注意するようにお話ししておりますが、なかなか理解してもらえません。確実に万病の元であるが、誰も知らない風邪に注意が必要です。
① 老人、虚弱児の様な抵抗力のない方は、風邪の症状は出さないで肺炎になります。
② 病人の持病は、ちょっとした風邪で悪化し命取りになります。
③ それぞれの体質によって風邪が原因とは思えない不快で苦痛な症状が無数訴えられます。
④ 入浴はやめて、風邪に対する養生をしてください。
何度も申し上げます。お体の弱っておいでの方は、熱のない肺炎(だるい、息苦しい)直接つながります。
二人の息子さんにまかせて、ご夫婦2人でゆっくり温泉旅行でもしてもらいたいものです。

「耳根清浄(じこんせいじょう)にして苦患(くかん)なし」②

頭で分かっていても身体が分かろうとしない方
Iさんは、大手住宅ハウスメーカーの役員をしている方です。大変まじめな努力家です。若くして工学博士号を取り、現在のエコハウスの先駆けとなった方です。大阪に本社があるため、現在は単身赴任をしており、帰省すると当店に定期的に訪問してくださいます。そのIさんは、身体に良いと考えたことは、ストイックに完璧にこなす人です。運動でも食事でも奥様が心配になるほど完璧にこなしているそうです。私は相談でいつも心配しているのは、実証タイプの方が頑張り過ぎると、かえって虚証タイプの人より病気しますよと注意しますが、なかなか心に届かないようです。「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」です。いわゆるオーバーヒートです。このタイプの方には
① 汝自身を知れ(天上天下唯我独尊)
② 自分に合った食生活と運動
③ 自分に合った仕事の量と質
④ 未病に対する自分に合った薬と健康補助食品
⑤ ほどほどに休もうとする勇気
いつも奥様とほどほどについてお話をしておりますが、なかなか興奮さめやらず名馬のようで、二人でたずなを引いているようです。

百酌余滴ひゃくしゃくよてき

当店は、この地にて30年ほどになります。お客様との長いお付き合いの中で、当店にどうしても来られないお客様も多くなりました。それでも服用の継続をお望みの客様には、月一回の配達日にお持ちさせていただいております。お客様の中には車の駐車場から山を登り20分ほどかかります。ちょっとした登山気分です。訪問するのを楽しみにしてくださいまして、とても感謝されております。配達時のお礼でしょうか、湯のみに一杯のお酒がでてきますが、失礼がないように余滴をいただくようにしております。自然に感謝し、一体となって生きているお姿に頭が下がる思いです。

常照護じょうしょうご

てんかんの娘さんが、当店に5年ほど前に御両親と来られ、漢方薬他、体質改善をしていただきました。2年ほどでてんかん症状も治まり、安心しておりましたが、最近、転勤先の静岡の方から連絡があり、また最近、以前のような症状ではないが、軽い痙攣症状とチック症状が現れたとのことでした。お母様からのお話を伺っているうち、一つ、気になることがありました。以前の相談の中で、ご両親様に「夫婦の有り様」についてお話したことを思い出し、現在はどうですか、「夫婦仲良く子供さんを見守ることが、子供さんの病気には大事ですよ。守られている安心感を与えてください。」と申しました。その時お母様は電話口で泣いていらしたようです。ついつい夫婦ゲンかを子供の前でしてしまい、以前お話ししたことを忘れていたようです。薬より大事なことですと申し上げました。

なんじ自身じしんを知れ、おぎなって治す。って治す。

この世には、一人として同じ人間がいないように、丈夫でとても元気な人もいれば、見るからに弱々しく虚弱な人がいます。なかなか中庸の普通の人は来ません。風邪を拗らして、なかなか治らないということで相談に見えたお客様は典型的な虚弱タイプです。テレビコマーシャルを見て購入した風邪薬を一週間ほど服用しても夕方になると微熱がでて、だるく、最近は胃痛もでてきたと相談に見えました。お客様のような弱い体質の方には、一般的な風邪薬では負担が大きく、そのために風を拗らせたことを申しまして、胃腸に負担がなく、「体力を補って治す」漢方薬をおすすめしました。また、近くの専門店の店長さんは、見るからに赤ら顔の丈夫な元気な方です。風邪を引いても休めないということで当店に見えて、漢方薬を求めましたが、相談によると食欲もあり、胃腸もしっかりしているので、漢方薬をよりも一般的な風邪薬の方が効き目もよく、早く治りますよと申しました。できたら今日だけは早く帰宅するように申しました。エネルギーがあり過ぎる方の風邪は「取って治す」のが一番です。

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